不定期刊行物 Sinfonica研究叢書No.23
公的統計のミクロデータ利用ガイド
-社会生活基本調査の匿名データを用いた分析を例として-本書は、公的統計のミクロデータを利用するための入門書(利用マニュアル)である。
公的統計とは、国や地方公共団体などの公的機関が作成する統計のことである。公的機関が作成する統計は、これまで昭和22年に制定された統計法に基づいて作成されてきたが、統計法が平成19年5月に改正(平成19年法律第53号)され、平成21年4月に全面施行されたことにより、公的統計は行政のためだけのものではなく、社会全体で利用される情報基盤であると位置づけられ、統計情報を広く国民が利用できるような統計制度が整備されてきた。
中でも、学術研究・高等教育の発展に資するなど公益を目的とした利用に限り、利用者からの委託に応じて、公的統計の作成機関が既存の調査票情報(個々の調査票のデータのことであり、一般にミクロデータという)から新たな集計表を作成・提供したり、匿名性を確保した調査票情報を提供するなど、調査票情報の二次的な利用の仕組みが整備されつつある。特に、後者の調査票情報の提供に関しては、匿名化されたミクロデータ(統計法では匿名データという)を利用して、我が国の社会・経済状況の実態に関する多様かつ高度な分析・研究が促進されることが期待されている。
しかしながら、公的統計の二次利用制度について、また、公的統計のミクロデータを利用するための手続きについて、統計ユーザの間で幅広く知られているとは言い難いというのが現状である。そこで当財団では、統計ユーザと公的統計の作成機関との橋渡しという役割を担うべく、公的統計の二次利用制度について研究するとともに、匿名データ利用の促進を目指して、利用マニュアルを作成することとした。
そこで我々は、実際に匿名データの利用申請によりデータ提供を受け、匿名データの分析・研究を行った。この実践経験をとおして、ユーザの視点からミクロデータを利用するための手順やポイントを確認するとともに、匿名データの分析により、より詳細で新しい視点からの分析の可能性を提示している点が本書の大きな特徴である。今後も読者(ユーザ)の声に耳を傾け、公的統計の二次利用制度の充実に合わせて、マニュアルの改善・充実を図っていく予定である。
なお、本書の読者としては、統計学に関する基礎的な知識があることを前提として、これまで何らかのミクロデータを使った分析経験があり、これから匿名データを用いて分析しようと考えている方々を念頭に置いている。実際に匿名データを利用する際に、本書が活用されることを期待している。
編集: | (公財)統計情報研究開発センター |
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規格: | B5判、115ページ |
発行: | 平成27年3月31日 |
価格: | 2,420円(税込) |
もくじ
- 導入部 二次利用ってどうするの?1
- 二次利用制度を利用した研究の流れ
- 第1部 二次利用制度の解説及び手続きの進め方13
- 1公的統計の二次利用と法律14
- 2利用の条件・種類21
- 3手続きの概要25
- 第2部 匿名データの使い方29
- 1データの特徴、説明書の読み方30
- 2データ形式、統計分析アプリケーション37
- 3分析事例53
- 第3部 その他の二次利用65
- 1オーダーメード集計66
- 233条申請70
- 参考資料76
- 匿名データ及びオーダーメード集計が利用できる統計一覧参考-2
- 匿名データ利用相談窓口一覧参考-8
- 匿名データを使用した分析例
- (1)高齢者の年齢3階級 別行動分析参考-10
- (2)種目ごとの平均行動日数の比較参考-17
- (3)家事・育児に費やす時間の分析参考-23
- (4)趣味・娯楽への生活時間配分の分析(その1)参考-32
- (5)趣味・娯楽への生活時間配分の分析(その2)参考-42