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湖や沼を汚(よご)れから救おう
~千葉・手賀沼~

(1)ねらい

○水質の汚染に関心をもち,健康や生活環境を守ることの大切さを知る。

○わが国の湖沼の汚染の実態を資料から読みとり,その発生の原因を読みとる。

○自分たちの身近な湖沼・河川・内湾などの水質の状態に関心を持ち, 水の汚れを少なくするための心がまえを作文にまとめる。



(2)指導上の留意点

○COD,BODなどの用語は学年段階としてくわしく扱えないので, 「水の汚れの程度を表す測定の項目」,ppm(mg/ )については 「1tの水の中に1gの物質が含まれているという単位」くらいの理解でよいであろう。



(3)参考事項

○水質汚染の測定ではCODだけではなく窒素やリンも対象となる。 手賀沼流域における1日あたりの系別汚濁発生の負荷量の調査(1995年) は次のとおりである。









○手賀沼の概要

成因=堰止,淡水。標高3m,面積6.5km2,最大水深2.9m,

平均水深0.9m。湖岸延長36.5km。流入河川7,流出河川1。透明度0.4~0.6m。

○窒素過多による被害の経年変化

・昭和34年(1959) N=79kg。昭和34~36年にかけて大堀川流域での稲作全盛。

・昭和39年(1964) N=120kg。この年,豊四季団地入居完了(N負荷量150kg増)

・昭和40年(1965) N=592kg。3月,第一し尿処理工場運転開始(N320kg増)。アオコ発生はじまる。

・昭和43年(1968) N=746kg。大堀川流域N過多で稲倒伏。水田耕作不可能。

・昭和46年(1971) N=971kg。アオコ発生悪化。

・昭和48年(1973) N=1,100kg。アオコ異常繁殖はじまる。

○「手賀沼」の学習をしたあとの児童作文

手賀沼の勉強を終えて          秋元理恵

 私は,手賀沼のことを勉強するまで,私達の使ったきたない水がみんな 手賀沼に流れ込むとは知りませんでした。手賀沼の勉強をして分かった事が沢山あります。 それは,手賀沼が日本で一番きたない沼だった事と,手賀沼をきれいにしようと粉石けん を使っている人が沢山いるという事です。それから,東初石にも早く下水処理場を作って ほしいと思います。 
 手賀沼の勉強をはじめてから,めったに見ない新聞も毎日見るように なりました。それから,私の家では合成洗剤を使っていたので,おかあさんに粉石けんに するように頼んだら,粉石けんを買ってきてくれました。おかあさんに,よく落ちる かどうか聞いてみたら,よく落ちると言ってくれました。
   一日も早く,手賀沼をきれいに したいと思います。


手賀沼の勉強を終えて          宮尾  淳

 僕は,手賀沼が一番きたない沼と言う事を知りました。僕は小さい時から, 大きなブロックなどをドブに入れてしまいました。今になって, それが手賀沼などに害を与えていた。合成洗剤・下水などいろいろなものが 流れて漁業にまで迷惑を与える。漁業だけかと思ったら農業にまで迷惑をかけて, 自然破壊をしてしまっている。 
 前は泳いだり出来たが,20年位で僕達人間が汚してきている。 今では,どうしようもなくなっている人間達,僕達が汚したんだから, 今度は汚しちゃったのをきれいにしなくてはならない。 
 今,手賀沼だけでなく琵琶湖などまできたなくなり始めて来た, 機械では元のようにきれいにはできない。今からもこれ以上きたなくならないよ うに生活して行きたいです。


公害の勉強を終えて          下島 正英

「公害」それは,水質汚染,大気汚染,などのことをまとめた言葉です。  僕は,「公害」なんて「四大公害(水俣病,新潟水俣病,イタイイタイ病, 四日市ぜんそくのこと)」なんてもんだ。と,ばっかり思っていました。
 しかし,「公害」はもっと身近な所にありました。 それは,僕の近くのドブ川(大堀川)が,手賀沼や川ぞいの田んぼに流し込み, 稲を倒したり,魚を殺していたのです。
 その手賀沼では,40万t位ヘドロがたまったり,メタンガスが出ているそうです。
 県や市町村などでは,ヘドロはどうしようもないので,下水管で川の水 (家から出る生活排水)を取り,大きな下水処理所で処理する方法が考えられているが, 工事は難行しているそうです。
 勉強を進めて,四大公害の中の水俣病の勉強に入りました。
 僕は,手賀沼みたいに知らないでやったと思っていましたが, この病気の原因のチッソ会社は,附属病院で水俣病の原因がわかっ ていたにもかかわらず,それを隠しつづけていたのが分かりました。
 みんな(僕を含めて)悪態をついていました。
 しかし,僕は急に「はっ」となりました。 それは,僕達もチッソと同じ事をしているのに気付いたからです。
 それは,僕達はドブ川に生活排水を流し,手賀沼をきたなくし, 「ゴミを捨てないようにしよう」「川をきれいにしよう」などの看板には, 目もくれず川にゴミを捨てたのを見たり,したりしたからです。
 日本全国の人々が,早くこの事や外の事から知り,自分の町・市・村など からきれいにして行く事が大切だと思います。


手賀沼で漁業をしているおじさんの話(深山氏)


資料『深山氏の話』(手賀沼漁業協同組合組合長)

手賀沼の汚れ(事実提示)

(教 師) 手賀沼の近くで,ずっと漁業をしているおじさんにお話を伺います。 今,ヘドロ等を見てきたのですが,随分汚れていますね。 もう少しくわしくその汚れについて教えて下さい。

(深山氏) 沼が20年このかた汚れてきたのですが,一番汚れかたのひどい しるしは水の透明度(どのくらい底が見えるか)が小さくなったことです。 昔は水深1m50㎝以上あって,底のところが見えたのに,今では,透明度が 5~10㎝になっている実情です。夏場に見ると,沼が一面緑色の染料を流した ようになります。これは,植物性のアオコがたくさん発生するためです。 水中の酸素やプランクトンをうばったりして魚が一時にたくさん酸素欠乏で 死んでしまいます。

(教 師) それで随分,コイなどが死んでいるんですね。

(深山氏) そうです。酸欠で死ぬ例が多いです。それからもう一つ原因があるんです。 手賀沼の水の中には,ほうぼうから生活排水が流れてきます。その中の有機物の小さい 粒子が藻の中についたり,魚の目やエラについたりして藻が呼吸できなくなったり, 魚は片目が奇形になったり窒息死したりしています。それから手賀沼のコイやフナ は3~6月頃産卵するのですが,その卵に有機物の小さい粒子が付いて日光の透過を妨げたり, 卵の呼吸を困難にしたりして,孵化率(卵のかえる率)を少なくしています。

(千葉県 東葛社会科研究会編 私たちのくらしと「手賀沼の汚染」
―公害学習の新たな指針―(地域学習のための授業書シリーズNo.1))