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自分の歯 大切にしてる?

(1)ねらい

○学校保健指導のうち,う歯対策の占める位置は大きい。特に,う歯予防,早期発見, 早期治療等保健教育の充実を図る。

○歯の衛生に伴う基礎的な理解をさせるとともに,う歯の発生要因について多面的に考えさせる。

○う歯や歯周病について,日常生活習慣の重要さに関心をもたせ,実践意欲を起こさせる。



(2)指導上の留意点

○歯科の専門用語は難しいので,できるだけ平易な用語で学習になじませる。 例えば「切歯」を「前歯」,「犬歯」を「糸切歯」,「臼歯」を「奥歯」,「 乳歯」を「赤ちゃんのときに生え,おとなの歯と抜けかわる歯」などわかりやすく 説明して捉えさせる。

○上記について,とくに「奥歯」のうち第一大臼歯(永久歯のなかで一番早く生え, 噛む力が一番強い歯であること)等,学習過程の中で適切な指導を行うことが必要である。 (参考事項参照)



(3)参考事項

○歯の外形と名称については次のとおりである。

 人間の歯には,乳歯と永久歯がある。歯は上顎と下顎に分かれ,それぞれ左右対称に並んでいる。 永久歯は片側に8本ずつ,合計32本である。なお,このうち第三大臼歯は智歯あるいは親知らず と呼ばれ,人によっては生えないことがある。また,乳歯の数は片側5本ずつ, 合計20本である。
 永久歯のうち,第一大臼歯は一番大きな歯で上の歯と下の歯では形も違う。 第一大臼歯は歯根も歯の中で一番しっかりしており,噛む力も一番強い。永久歯の中で一番早く生え, 6歳のころに生えるので6歳臼歯とも言われている。また,この歯が1本なくなると,口全体の噛む力 が半減するとも言われる。




○前歯と奥歯の形態は次のとおりである。



○前歯,糸切り歯,奥歯の役割分担をわかりやすく説明すると次のように図示できる。



○第一大臼歯の生えたての時,6ヵ月後,40年後の表面を電子顕微鏡で見ると次のように説明できる。

 生えた直後の永久歯は表面に大きな穴が開いていて、月のクレーターのように凸凹が たくさんある。これは、エナメル質の小さな柱である。この状態では、歯の表面が粗いため イオンが通りやすく、虫歯になりやすい。また、汚れが付きやすく取れにくい。さらに、酸に 対する抵抗力も少ない。

        
        (6ヶ月後)

 6ヶ月経過すると大きなクレーター状の穴は少なくなり、より平らになってくる。 これは、唾液の中のカルシウムやリンが徐々に沈着して再石灰化し、歯の表面を丈夫にした ためである。
 永久歯が生えてから安定した状態になるまで5年程度かかる。生えてから5年間は虫歯に なりやすいため注意が必要。

        
        (40年後)

 40年経過すると、咀嚼により歯の表面がすべってなめらかな状態になり、 汚れが付きにくく落としやすくなる。
(写真提供:愛知学院大学・中垣教授)

○むし歯は夜行性であるといわれる理由を図示すると次のようになる。

 通常,唾液はむし歯の活動を抑える働きがある。ところが,寝る前に砂糖の入ったおやつを食べて, そのまま寝てしまうと,寝ている間は唾液の出方が少なくなるため,むし歯菌の出す酸を中和して 低下したpHを中性に戻す作用が弱くなる。このため,寝ている間,ずっとむし歯の攻撃を受けている ことになる。
 図の曲線は活動時と就寝時の歯垢(プラーク)pHの違いを表している。 実際は1%砂糖液でうがいした後のpHの変化である。就寝時は唾液の分泌が低下して, 歯垢のpHも数時間にわたって低く保たれ,とてもむし歯になりやすい状態になる。




○むし歯になりやすい歯の有病率は次のとおりである。



○児童に興味がある動物のアゴの骨と歯並びを写真で示したものがある。 授業の中で見せると効果的であろう。

獲物を倒すために全ての歯が鋭く尖っている。肉を引き裂き,かみ切るのに 都合よく動くよう犬歯が発達しており,ハサミのように切って食べるため, 顎は上下しか動かない。 前歯で草や木をかみ切り,同じ大きさで,すきまなく並んでいる臼歯ですりつぶす。 そのため,顎は前後左右によく動くようになっている。 切歯,犬歯,臼歯がバランスよく並び,肉食・草食動物の両方の特徴を併せ 持っている。顎は上下左右に動く。


○むし歯の内容を示すためにDMF(dmf)という用語が使われる。 (永久歯のむし歯はDMF,乳歯のむし歯はdmfである)


   ●D(d):Decayed teeth・・・むし歯で未処置の歯

   ●M(m):Missing teeth・・・むし歯が原因で抜歯した歯

   ●F(f):Filled teeth ・・・むし歯で処置を完了した歯




○各学年ごとに,野菜や固いものと主食についてのN小学校の残菜調べ。(参考)

2.及び3.の調査結果との関連の深いことがわかったので紹介する。




○東京都保健統計とN小学校のう歯状況調査