「都道府県別メッシュ情報一覧(2000年版)」の利用について

1.はじめに

 人口などの統計データを用いて地域を分析する場合、人が住んでいる地域と人が住んでいない地域(以下、人口0と言う)を把握することが重要である。例えば、日本においては、国土の大部分が山間部で占められており、分析対象とする地域に人口0の地域が含まれることがある。分析対象の地域に人口0の地域が多く含まれ、一部に人口が集中していたとする。地域の人口をそのまま塗り分けなどで表現した場合、人口密度が実際よりも過小に現され、人口がその地域全体に一様に分布して、生活圏が広がって見えるといった錯視がされやすい。人口の有無をあらかじめ把握しておくことで、より地域の実態にあった詳細な分析が可能になると考えられる。

 「都道府県別メッシュ情報一覧(2000年版)」は、「平成12年国勢調査に関する地域メッシュ統計」と「平成13年事業所・企業統計調査に関する地域メッシュ統計」を用いて、日本国土にかかるすべてのメッシュに人の有無、事業所の有無を収録したデータであり、1kmメッシュおよび500mメッシュについて作成している。さらに、当該地域メッシュ区画が含まれる25000分の1地形図名、県、市区町村の名称やコードなどの情報を付加している。

 これらの情報によって、地域メッシュコードから当該地域メッシュにかかる県・市区町村の情報あるいは県名・市区町村名から当該地域に含まれる地域メッシュコードを参照することができる。また、他の統計データと組み合わせて、地域の特性を把握し、多角的な分析ができると考えられる。

2.データ内容の説明

 「平成12年国勢調査に関する地域メッシュ統計」は、日本の国土にかかる地域メッシュのうち、人が住んでいるメッシュについて収録されており、人口0のメッシュについてのデータはない。同様に、「平成13年事業所・企業統計調査に関する地域メッシュ統計」は事業所があるメッシュについてのみ収録されている。人口の有無、事業所の有無のデータ作成に当たっては、これらを用いた。また「平成12年国勢調査 小地域集計(町丁・字等別地図(境界)データ)」を用いて、県、市区町村の名称およびコードを抽出した。

データ・レイアウトは、以下の通りである。
※データファイルは、CSV形式で作成しており、項目ごとにカンマで区切られている。

①ID
 日本測地系と世界測地系を識別するため、最初のカラムにデータID(日本測地系「2000J」、世界測地系「2000W」)を付した。

②地域メッシュコード
 第1次地域区画のメッシュコードを利用して、「平成12年国勢調査 小地域集計(町丁・字等別地図(境界)データ)」と重ね合わせ、日本の国土にかかるすべての1kmメッシュおよび500mメッシュを発生させた。
 ※地域メッシュコードは、区画ごとにカラムを分けている。

③人の有無
 ②地域メッシュコードと「平成12年国勢調査に関する地域メッシュ統計」に収録されているメッシュコードをマッチングさせ、マッチングしなかったメッシュコードを人口0のメッシュとして、「0」を付している。メッシュコードがマッチングした人が住んでいるメッシュには、「1」を付している。

④事業所の有無
 ②地域メッシュコードと「平成13年事業所・企業統計調査に関する地域メッシュ統計」に収録されているメッシュコードをマッチングさせ、マッチングしなかったメッシュコードを事業所0のメッシュとして、「0」を付している。メッシュコードがマッチングした事業所があるメッシュには、「1」を付している。

⑤県・市区町村コード、県名・市区町村名
 ArcView3.3を用いて、「平成12年国勢調査 小地域集計(町丁・字等別地図(境界)データ)」と②において作成した1kmメッシュおよび500mメッシュのポリゴン(境界データ)を重ね合わせ、当該地域メッシュ区画にかかる県、市区町村の名称およびコードを抽出した。

⑥当該地域メッシュ区画が含まれる25000分の1地形図名
 「平成12年国勢調査に関する地域メッシュ統計」および「平成13年事業所・企業統計調査に関する地域メッシュ統計」に収録されている「当該地域メッシュ区画に含まれる25000分の1地形図名注)」を抽出し、すべての1kmメッシュおよび500mメッシュの第2次地域区画のメッシュコードとマッチングさせた。

注)
 「当該地域メッシュ区画が含まれる25000分の1地形図名」は、「平成12年国勢調査に関する地域メッシュ統計」および「平成13年事業所・企業統計調査に関する地域メッシュ統計」に収録されているメッシュコードから抽出している。元々統計データのない日本国土にかかる人口0のメッシュや事業所0のメッシュに関しては、「当該地域メッシュ区画が含まれる25000分の1地形図名」のデータが抽出できないため、ブランクとしている。

3.活用事例
1)「都道府県別メッシュ情報一覧」の人の有無データと町丁・字等別地域の人口分布の重畳
 町丁・字は、日常生活に密着した地域の基礎的な単位である。この町丁・字等別に集計された「平成12年国勢調査 小地域集計(町丁・字等別地図(境界)データ」をGISソフトで利用することにより、地域の特徴が分かりやすい統計地図を作成することができる。しかし、作成した町丁・字等別の統計地図は、時として町丁・字の大きさが都心部や山間部などによって異なることがある。例えば、山間部では、町丁・字等の境域の面積は大きいが、実際に人が住んでいる地域の面積は小さいことが多い。都心部と山間部を並列して、町丁・字等別の人口分布の統計地図を作成すると、山間部の町丁・字の面積が非常に大きいために、描画された面積のイメージによって、統計データが表す値よりも過大に表現されやすい。
 町丁・字等別の人口分布の統計地図(図1)に、「都道府県別メッシュ情報一覧(2000年版)」に収録した1kmメッシュの人の有無データを重ね合わせる(図2)と、町丁・字を人が住んでいる地域と人が住んでいない、いわゆる人口0の地域に分割することができる。人の有無のデータを用いることで、町丁・字等別の人口分布では捉えきれない通常の生活圏が把握できる。

図1  図2 
町丁・字等別の人口分布(平成12年国勢調査) 図1に1kmメッシュの人口有無データを重ね合わせた図

 図1から分かるように、都心部の町丁字の面積が小さく、山間部では面積が大きい。そのため山間部では都心部と同様に人口が地域全体に広がっているような印象を与える。しかし、図2のように人の有無のデータを重ね合わせることで、同じ町丁・字であっても、人口が多い地域として濃い色で塗られていた山間部では、青色が増え、ほとんどの地域が人口0であることが分かる。このように、「都道府県別メッシュ情報一覧(2000年版)」を用いることで、より実態に即した可住地域が把握できるのである。

 また、500mメッシュについてのデータも収録しており、1kmメッシュよりも詳細な可住地域を捉えることができる。居住地域の把握により、過疎地域の把握や開発可能地域の検討、防災計画といった様々な分析に用いることができる。

図3
図1に500mメッシュの人口有無データを重ね合わせた図

2)居住地域と事業所有無の関係
 「都道府県別メッシュ情報一覧(2000年版)」には、人の有無データの他に、事業所の有無データを収録している。図4は1kmメッシュについての人の有無の分布図であり、人が住んでいるメッシュをピンク色で塗り分けた。図5は1kmメッシュについての事業所有無の分布図であり、事業所のあるメッシュを黄色で塗り分けた。

図4 人口の分布図 図5 事業所の分布図

 図4と図5を比較してみると、人口の分布と事業所の分布は、ほぼ同じような分布になっていることが分かる。つまり、人が住んでいる地域に事業所が存在していることになる。人の有無および事業所の有無データを用いて、それぞれの分布を重ね合わせてみる。

図6 事業所のない居住地域のメッシュの分布図 図7 人口0の地域で事業所があるメッシュの分布図

 図6はピンクに塗り分けた人が住んでいるメッシュ(図4)の上に、事業所のあるメッシュを白く塗りつぶした図である。つまり、図6でピンクに塗られているメッシュは、事業所のない、人が住んでいる地域になる。一方、図7は黄色に塗り分けた事業所のあるメッシュ(図5)の上に、人が住んでいるメッシュを白く塗りつぶした図である。つまり、図7で黄色に塗られているメッシュは、事業所のみがある地域になる。人の有無の分布および事業所有無の分布を様々なパターンで重ね合わせると、人が住んでいない事業所のみがある地域、逆に事業所のない居住地域が存在することが把握できた。

 このように、人の有無や事業所の有無というデータを用いて、地域的特性を把握することができる。そして、人の有無、事業所の有無の情報を他の統計データと組み合わせて用いることで、生活空間や社会空間といった単位で、可住地域の把握だけでなく、社会空間のネットワーク分析などの地域特性を分析する際の素材として利用することができる。


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