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シンフォニカ統計GIS活動奨励賞これまでの受賞者

2023年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(五十音順・敬称略)

 2023年度の「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」は、次の3組に授与することが決定いたしました。受賞者には賞状及び副賞を授与いたしました。

東京都市大学総合研究所 デジタル都市空間情報研究開発ユニット
(代表:秋山祐樹  研究分担者:馬塲弘樹 水谷昂太郎)

『政府統計とAI を活用した日本全土をカバーする現在および将来の空き家予測マップの開発と成果発信のためのWebGIS環境の整備』

 東京都市大学総合研究所 デジタル都市空間情報研究開発ユニットは、近年わが国で深刻化しつつある「空き家問題」という困難な課題に対して、その解決に向けた統計、空間情報、GISを活用した研究活動を積極的に推進してきました。
 その活動の一環として、「政府統計を活用した日本全土をカバーする現在および将来の空き家予測マップの開発と成果発信のためのWebGIS環境の整備」を他大学、地方自治体、国と連携して進めてきています。具体的には、政府統計データ(国勢調査、住宅・土地統計調査)をAI(機械学習)により解析することで、日本全国の市区町村ごとの現在と将来(2018年~2038年)の空き家率を推定する技術を開発し、我が国で初めて日本の全自治体をカバーする現在および将来の空き家率マップを整備しました。さらに、これらの成果の幅広い活用による空き家対策の促進・加速を狙って、2023年3月にWebGIS「空き家予測マップ」を開設し、原則無償での閲覧と非商用利用を可能としています。加えて、研究室に所属する学生を同研究に参画させることで、教育効果を得ています。
 以上のように、本研究活動は、統計GISの整備・充実、普及・利用、広報・啓発、研究・教育の推進に寄与しており、今後の発展性と将来性が大いに期待できることから、本賞を授与することといたしました。

森岡 渉 (イリノイ大学アーバナシャンペーン校 地理・地理情報科学専攻 博士研究員)

『共立地・近接・偏在度の空間分析を通した統計GIS の研究・教育、普及・利用、整備・充実』

 森岡渉氏は、GISとりわけ空間分析を専門とし、次のような具体的な取り組みにより、大きな成果を挙げてきました。
 まず、統計GISの研究においては、人口や施設数などメッシュごとにカウント集計された統計GISデータに対して、その事象の大局的・局所的な空間偏在度を求められる簡便な統計解析手法の開発や、施設立地の分布を調べるための手法として、都市空間におけるコロケーション(複数種の点事象の共立地)関係を統計的により正確に分析できるネットワーク双対K関数法の開発などの成果を挙げてきました。
 次に、統計GISの整備・充実においては、地域ポリゴンごとに集計された統計GISデータを、ネットワークに制約された空間での分析に使用できるデータ(ネットワーク上の点や線分ベースのデータ)にGISソフトウェア環境下で変換する手法を開発しました。
 さらに、統計GISの普及・利用においては、人口統計等の統計GISデータを活用した、都市空間における各種施設立地及びアクセシビリティに関する様々な空間分析研究に取り組み、成果を挙げてきました。国内外の社会問題の解決に資する情報を提供する同氏の統計データを使用した空間分析研究は、統計GISの適用例としても非常に価値が高いといえます。
 また、統計GISの教育においては、日米の大学においてゲリマンダーを用いた可変単位地区問題の説明やそれぞれの国におけるセンサスデータの活用などを行ってきました。
 以上のとおり、同氏の統計GISの整備・充実、普及・利用、研究・教育の推進における功績を称えるとともに、今後のさらなる活躍を期待し、本賞を授与することといたしました。

(特別賞)  谷 謙二 (元埼玉大学教育学部教授)

『フリーGIS ソフトウェア「MANDARA」などの開発と提供』

 谷謙二氏は、生前、都市地理学や人口地理学を中心に研究する地理学者として、統計データを地図の形で視覚化する様々なシステムやソフトウェアを開発し、提供し続けてきました。
 特に、同氏が1990年代から開発・提供してきたGISソフトウェア「MANDARA」は、フリーGISソフトウェアの先駆的存在です。MANDARAは、国勢調査などの統計データを主題図として表示できるツールであり、統計データのGIS境界データが与えられなくても統計表のみから地図として表示することも可能で、この機能は、現代の他のGISソフトウェアと比べても極めて特徴的であり、今でも多くの利用者から支持され続けている理由の一つと言えます。
 同氏は、2022年夏にご逝去されましたが、過去30年ほどの間、多くのシステム、ソフトウェア、著作物を提供し、その多くが今もなお利用され続けるなど、統計GISの普及・利用、広報・啓発および研究・教育の推進に極めて大きな貢献をしてきました。
 以上のように、同氏の生前の多大な功績を称えるとともに、MANDARAなどのフリーGISソフトウェアは今後の地理教育や統計GISに対し多大な貢献が期待されることから、シンフォニカ統計GIS活動奨励賞(特別賞)を授与することといたしました。

2022年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(五十音順・敬称略)

 2022年度の「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」は、次の2組に授与することが決定いたしました。受賞者には賞状及び副賞を授与いたしました。

王 汝慈 (千葉大学 環境リモートセンシング研究センター 特任助教)

『リモートセンシングとGISを併用した地理空間データの作成と分析 ―衛星画像、小地域統計データ、ビッグデータのマッシュアップを通して―』

 王氏は、GISやリモートセンシングを活用した地理空間分析と実証研究を推進し、統計GIS研究の深化に貢献してきました。特に、衛星画像から小地域統計データを創り出すとともに、各種の地域統計をマッシュアップし、新たな地理空間情報を導き出す取り組みは独創的であり、今後の統計GIS研究の推進と普及への貢献が期待されます。
 さらに、国際会議や海外のGIS関連学会への積極的な参加、海外の大学との共同プロジェクトへの参画などの国際的な活動のほか、日本における統計GIS研究の成果や課題を海外に発信するなど普及にも尽力してきました。
 同氏のこれまでの統計GISの研究・教育の推進、普及・利用に寄与した功績を称えるとともに、今後、さらなる国際的な活躍への期待も込め、本賞を授与することといたしました。

長谷川 普一 (新潟市都市政策部GISセンター 主幹)

『行政における統計GISの利活用と普及活動』

 長谷川氏は、新潟市都市政策部GISセンターにおいて実務を行う傍ら、人口減少によって惹起される空き家問題や公共施設の適正配置などの諸問題について、統計とGISを活用した研究で成果を挙げ、具体的な解決策の提案を行ってきました。
 また、地方自治体における小地域統計ならびにGISの利活用について、国や地方自治体、各種団体が主催する会議で講師を行うなど普及活動にも積極的に関わってくるとともに、大学の講師としてGIS分野の教育、人材育成にも貢献しています。
 以上のように同氏のこれまでの統計GISの研究・教育の推進、普及・利用に寄与した功績を称えるとともに、今後のさらなる活躍を期待し、本賞を授与することといたしました。

2021年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(五十音順・敬称略)

遠軽町、玉置昌史(遠軽町職員)、株式会社テクノ

『遠軽町GISの構築と普及』

 遠軽町では、自治体、地元企業である株式会社テクノ(顧問:一宮龍彦、代表取締役:一宮龍旗)及び地域の自治会の連携により、全国に先駆けて統計を活用した町内GISの開発を行い、防災システムを構築し効果を挙げてきました。具体的には、当時、同町では繰り返しの内水氾濫で床上浸水被害を受けていたことから、安否確認と状況把握を目的に自作の住宅地図の電子化と町役場の測量地図データを家屋の位置で関係付けた遠軽町GISを構築しました。これにより、被災時には避難所で住民の安否情報が可視化され、必要な共助が行えるとともに、各自治会の安否情報は役場の測量地図上に集積され、公助に利用されています。
 さらに、町内GISは河川改修、通信可能領域の分析等のほか、図書館の蔵書管理、ジオパーク誘致等にも利活用され、地域活性化にも貢献してきました。
 これらの自治体、地元企業、住民での協働による統計GIS整備の実績を称えるとともに、今後も町で育てるGISの好事例として他地域へのさらなる普及を期待し、本賞を授与することといたしました。

岡 檀 (統計数理研究所 医療健康データ科学研究センター 特任准教授)

『GISを用いた地理的特性指標の開発、心身の健康状態に関する地域間格差の把握と要因の探求』

 岡氏は自殺、介護などの社会問題に注目したコミュニティ研究を専門とされています。
 同氏の研究では、統計とGISの一体的利用、及びフィールドワークによる丁寧な観察から、地理的特性と自殺率との関係に関する探究(GISを用いて開発した新たな指標「可住地傾斜度」と自殺率との強い正の相関の発見、「路地」の推定ロジックの構築と自殺予防因子形成への寄与可能性の検証、Covid-19感染拡大後の自殺率上昇の地域差及び性差の分析など)を行い、研究成果から導かれた洞察と知見に基づき、新たな対応策を提案してきました。また、研究成果を一般向けに書籍として出版しており、2013年の発刊以来、増刷を重ねています。
 これら活動の、統計GISに関する研究の推進への功績、また統計GISの一般への普及に寄与した功績を称え、本賞を授与することといたしました。

土田雅代 (ESRIジャパン株式会社 ソリューション営業グループ 課長)

『GISの実社会・学校教育への普及活動』

 土田氏は職務においてGISソフトウエアの輸出入、販売及び導入・サポートに携わる傍ら、GIS Dayや地理情報システム学会のハンズオンセッションに代表される各種イベントにおける講師などGISの推進・普及、大学を始めとした教育機関における授業・研究のサポートなどのGISに関する教育の推進、さらに、地理情報システム学会代議員を務め、またアメリカ地理学会においてGISに関連した発表を行うといったGISの広報・啓発及び研究など、職務の枠を超えて幅広く活動し、統計GISの普及に尽力してきました。
 同氏のこれまでの統計GISの実社会・学校教育への普及活動における功績を称えるとともに、今後のさらなる活躍を期待し、本賞を授与することといたしました。

2020年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(五十音順・敬称略)

嚴 先鏞 (東京大学空間情報科学研究センター 特任研究員)

『統計GISを活用した集約型都市における土地利用と施設配置に関する研究』

 嚴氏は集約型都市構造における望ましい土地利用と施設配置を対象とし、統計GISを活用した研究を進めてきました。具体的には、近年持続可能な都市構造として注目されているコンパクトシティの実現に向けて、ミクロな観点からの近隣の望ましい土地利用の解明、マクロな観点からの自治体の拠点配置計画における利便性評価と施設配置手法の提案を試みています。
 ミクロな観点からの研究では、土地の用途間の空間関係による住環境への影響の違いを明確にし、様々な観点から望ましい土地利用の空間的な配置パターンを明らかにしており、International Journal of Geographical Information Scienceや都市計画論文集などにおいて、多くの研究論文発表を行っています。さらに、マクロな観点からの研究では、既存の研究が計画内容や現況分析に留まっていることから、実際の住民の利便性を担保するために、意識調査と統計GISデータを融合し活用することにより、将来の集約型都市構造における施設及び公共交通再編の具体的な効果を示すなどの成果を得ています。
 また、嚴氏は、統計GISを用いた教育活動も積極的に行っており、統計GISを積極的に活用しながら人口減少、自然災害、ビッグデータの活用など様々な現実問題の把握から解決まで学習できるよう、大学の授業や講習会における普及啓発活動に尽力しています。
 以上、嚴氏のこれまでの研究・教育活動への功績を称えるとともに、今後のさらなる活躍を期待し、本賞を授与することといたしました。

桐村 喬 (皇學館大学文学部コミュニケーション学科 准教授)

『過去・現在の小地域統計を利用した都市の時空間分析』

 桐村氏はこれまで小地域統計を利用したGIS研究に取り組み、多くの研究成果を挙げてきました。
 博士論文では、小地域の類型化という地理学的研究のアプローチを掘り下げ、自己組織化マップ(SOM)による類型化手法の技術的な問題の改善と、分析の方法論的な問題の改善を図ることを目的とした、小地域単位の地域の類型化手法及びその方法論を提示しました。本論文は、人工知能に基づくクラスタリング手法の一つであるSOMを改良して、大量の小地域を類型化する方法を提案し、その有用性を多様な観点から検証した実証研究であると評価されています。
 その他、日本の六大都市における過去の小地域人口統計のGISデータベースの構築と、これらを活用した都市内部の人口分布の長期的変化の分析、近代期の都市の歴史GIS分析を行い、その成果は国際誌に掲載されました。これらのデータの一部は、経済学系を中心とする他の研究者にも提供・利用されており、有益な研究資源となっています。
 このような桐村氏の業績は高く評価され、2017年には地理情報システム学会 学会賞(研究奨励部門)を受賞しました。また、2019年には吉田秀雄記念事業財団の出版助成を受けて『ツイッターの空間分析』(古今書院)を刊行するなど、多様なアプローチによるGIS研究を展開しています。
 さらに、総務省統計研修所講師、「GIS Day in伊勢」の開催(2017年~現在)などを通して、統計GISの研究支援・教育、普及・利用の推進において大きく貢献されています。
 以上、桐村氏のこれまでの研究・教育・普及活動の功績を称えるとともに、今後のさらなる活躍を期待し、本賞を授与することといたしました。

小泉 諒 (神奈川大学人間科学部 准教授)

『小地域統計を用いた東京大都市圏における居住地域構造の研究』

 小泉氏はこれまで統計GISに関する研究・教育の推進を通して、都市地理学分野を中心として成果を重ねてきました。
 研究面では、東京大都市圏を対象に人口統計を用いて、居住の空間的パターンを分析し、郊外住宅地の居住分化と社会的分極化が同時進行している可能性や、1990年代以降の若者の変化を端的に表すパラサイト・シングルに着目しながら、その分布パターンを規定する要因を分析し、その要因に地域的な差異がある点、さらに、バブル経済期以降の東京の人口特性の空間的パターンとその変化について、社会地図を通して検討し、大都市圏レベルでは空間的パターンがさらに複雑化する可能性をそれぞれ明らかにしています。
 また、東京大都市圏の社会空間構造とその変容について地域メッシュ統計を用いて地図化し、アジアの都市変動をテーマとした書籍Urban Development Challenge, Risks and Resilience in Asian Mega Cities(Springer、分担執筆)において発信しました。
 そのほか、宮澤仁編『地図でみる日本の健康・医療・福祉』や日野正輝・香川貴志編『変わりゆく日本の大都市圏』など、一般向けの書籍においても分担執筆を行っています。
 一方、教育面では、神奈川大学人間科学部「地域情報論」や明治大学文学部「地域統計学Ⅰ」、「地域統計学Ⅱ」、立教大学文学部「カルトグラフィー」などの担当講義において統計GISの活用を積極的に進めています。e-Statの利用方法からGISソフトを用いた小地域統計分析等まで幅広く指導し、地理学を専門としない学生に対しても統計GISの有用性を理解させるなど、統計GISの普及・利用にも貢献しています。
 このように、小泉氏は統計GISの研究・教育や社会への普及に対し、幅広い業績を蓄積し、尽力されています。以上の功績を称えるとともに、今後のさらなる活躍を期待し、本賞を授与することといたしました。

渡部靖司 (愛媛県立松山南高等学校 教諭)

『高等学校「総合的な探究の時間」でのjSTAT MAP地図で見る統計GISを活用した統計的課題研究の指導と授業実践モデルの普及活動』

 渡部氏は高等学校における統計GISを用いた統計教育の方法論的研究・授業実践の分野で先進的で活発な活動を行い、顕著な実績を挙げています。
 特に、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けた高等学校普通科課題研究において、生徒に主体的な統計的探究活動を指導し、その実践授業は、新学習指導要領に完全に移行するときの全国の高等学校のモデル授業になることが評価され、文部科学省から来年度に公開される情報Ⅰ授業実践事例集への掲載が予定されています。具体的には、生徒が小学校、中学校、高校の数学Ⅰ「データの分析」で学んだ記述統計の知識やe-StatのjSTAT MAP(地図で見る統計)などを活用し、PPDACサイクルに従い、統計データを地図上に表すことによって、地域課題を解決する政策を提案する統計的な課題研究になっており、生徒の主体的探究態度の養成と並行し統計リテラシーの育成指導に効果を挙げています。
 さらに、渡部氏が実践担当した生徒たちの統計的課題研究は、統計データ分析コンペティション2019「優秀賞」、同2020「特別賞(統計活用)」、第9回データビジネス創造コンテスト「優秀賞」、第3回和歌山県データ利活用コンペティション「データ利活用賞」など数多くの受賞実績があります。また、これらの実践内容については、日本統計学会「統計教育の方法論ワークショップ」等において研究発表を行い、広く高校教育に対して、統計GISの授業教材化の成功事例を提示し、普及啓発の効果を挙げています。
 加えて、高等学校では2022年度から地理総合が必修化し、GISが柱になることから、渡部氏の一連の授業実践は同分野を牽引することが期待されます。以上の理由から本賞を授与することといたしました。

2019年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者(敬称略)

鈴木雅智 (東京大学空間情報科学研究センター 特任助教)

『不動産情報を活用した人口減少期の住宅市場に関する研究』

 鈴木氏は、これまで一貫して住宅・不動産を主な対象とし、統計GISを活用した研究を進めてこられました。とりわけ、日本や世界が直面している「人口減少」という社会的要請が高い課題に対し、縮小する住宅市場と長期間放置される空き家を統合して捉えることを試みています。
 鈴木氏の研究では、国土数値情報等のオープンデータ、不動産ポータルサイトへの掲載・取引情報や、住宅・土地統計調査、住生活総合調査等の公的統計の個票データ等、様々な統計・GISデータを活用することで、実社会へ還元できる豊富な知見が得られています。
 さらに、統計情報から実証的に捉えられる現象をもとに、理論的な枠組みを構築する研究も進めています。とりわけ、従来の都市経済学では人口増加の状況を想定してきましたが、鈴木氏は、人口減少期特有の性質を取り入れた、これまでとは本質的に異なる土地利用モデルを新たに提案し、住宅所有の価値が負になる現実や居住密度の低下等、政策的にも重要な示唆を得ています。
 以上のように鈴木氏の研究は、都市計画・建築学、経済学にまたがる学際的なアプローチをとりながら、統計・GISデータによる実証分析・理論構築に並行して取り組んでいる点が大きな特徴であり、学術的に先見性・独創性が高く、若手研究者として将来性が高いと評価できることから、活動奨励賞を授与することとしました。

2018(平成30)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(五十音順・敬称略)

大場 亨 (千葉県市川市市民部 次長)

『行政GISにおける「小地域集計」の利活用の促進』

 大場氏は、市川市市民部次長として公務に当たる傍ら早稲田大学社会科学部で講師を兼任されています。
 2002~13年には、総務省独立行政法人評価委員会統計センター分科会専門委員として、今日の「地図で見る統計(統計GIS)」サイトの普及・改善に貢献されてきました。
 また、学術論文や著書も多数執筆されており、特に2008年に刊行した『統合型GISが行政を変える』(古今書院)では、統合型GISがどういった業務にどのように活かせるのか、導入にあたって知っておくべき事項、製品仕様書の作成等について詳細に解説しておられます。そして、それまで研究者を中心に利用されてきたGISが本書を契機として実務者にも利用されるようになり、GIS利用の裾野を広げることに貢献されました。
 以上の功績に対して、本賞を授与することといたしました。

熊谷文枝 (杏林大学名誉教授)

『統計GISによる地域分析と地域再生への提言』

 熊谷氏は社会学を専門とされ、「日本社会の地域性」を研究テーマとして、人口と家族を地域社会との関連から分析することを主眼とされています。具体的には、統計GISグラフ化ソフトを活用して小地域統計(市町村レベル)オープンデータを分析し、可視化しています。そして、それらの研究成果を積極的にグローバル社会に発信するとともに、社会分析から様々な提言を行うなど、国内外を問わず幅広く活動をされています。
 2018年には『「地域力」で立ち向かう人口減少社会―小さな自治体の地域再生策―』(ミネルヴァ書房)を上梓されました。同書ではGISとオープンデータによる地域レベルの人口動態や地域特性の分析を始め、人口減少する我が国において地域再生・活性化に結び付けている自治体を取り上げて分析し、地域への提言を行っておられます。
 統計GISは、分析結果を地域の将来設計に活かすことで社会貢献することに意義があり、熊谷氏の一連の活動と成果はそれらに合致します。よって、本賞を授与することといたしました。

村上大輔 (統計数理研究所データ科学研究系 助教)

『地理情報の大規模化・多様化を見据えた空間統計解析の研究推進・普及』

 村上氏はこれまで大規模・多様な地理空間データの統計モデリングを高速・柔軟に解析するための手法を幅広く開発・整備されてきました。また、開発した手法のすべてを独自に開発したフリーの統計ソフトウェアRの空間パッケージにて公開しており、これらは広く利用されています。そして、それらの活動が評価され、これまでに国内外において14件の表彰を受けておられます。
 さらに、統計GISに関する研究では、これまでにGeographical Analysisなど、統計GISに関連した数々の著名な国際誌に共著論文が掲載されるなどの成果を挙げておられます。以上のように、これまでの統計GISの発展と普及への貢献、また、今後のさらなる活躍を期待し、本賞を授与することといたしました。

2017(平成29)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(五十音順・敬称略)

関根智子 (日本大学文理学部地理学科 教授)

『小地域統計を用いた生活関連施設への近接性の研究』

 関根氏は、小地域統計を用いて生活関連施設への近接性を研究されています。近接性とは、場所間の「到達のしやすさ」を表す概念であり、発地(居住地)から着地(施設)への道路距離で測定されます。
 関根氏の業績のひとつは、近接性を通じて、分析に用いる単位地域によって分析結果が変わるという可変的単位地域問題(MAUP)に取り組まれていることです。具体的には、千葉県松戸市の眼科医院や東京都足立区のコンビニエンスストアといった各施設を対象とされました。
 関根氏のもうひとつの業績は、近接性を通じて、地域住民に対する公共サービス提供の公平性を分析されている点です。具体的には、東京都世田谷区の救急病院と避難所を対象として、ローレンツ曲線の適用とジニ係数を算出し、避難所の方が公平性の高い分布をとっていることを明らかにされました。
 関根氏の近接性の研究は、分析する事象が展開する空間スケールに応じて、適切な空間集計単位を選択すべきであること、さらに、小地域人口統計が、地域住民に対し公平性の高い公共サービスを提供するときに不可欠な基礎統計であることを実証しました。
 以上のように関根氏の研究は、今後、統計GISの研究・普及等のために極めて重要であることから、活動奨励賞を授与することとしました。

2016(平成28)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(五十音順・敬称略)

梶田 真 (東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系 准教授)

『小地域統計を利用した地域経済・社会の動態分析』

 梶田氏は、経済発展と地域的経済格差の関係、地域間所得再分配に関する諸政策の実態と評価について、フィールドワークとともに計量分析を用いて論証を行っています。
 一方で、小地域統計の整備過程および利用環境を整理し、過疎地域、新産業都市、原発立地地域などにおける地域経済・社会の動態分析を通じて、その活用の可能性を探っています。
 以上のように梶田氏の研究は、今後、統計GISの研究・普及等に対して大いに期待できることから、活動奨励賞を授与することとしました。

2015(平成27)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(五十音順・敬称略)

上杉昌也 (立命館大学衣笠総合研究機構日本学術振興会 特別研究員)

『小地域統計を用いた地理的な社会経済的格差の把握と近隣居住環境への影響に関する研究』

 上杉氏は、国勢調査や国土数値情報などのオープンデータや住生活総合調査(旧住宅需要実態調査)など既存の公的統計の二次的利用により、町丁目単位で世帯の所得分布を推計する手法を開発し、近隣スケールで地理的な社会経済的格差を明らかにする研究を行いました。これをもとに、社会経済的格差が、犯罪発生等の居住環境や土地の価格、居住者の居住満足度へ与える影響などについて、データに基づいた定量的な実証分析を行いました。都市における居住人口の多様化やコンパクト化への適切な政策的誘導の必要性を鑑みると、居住地人口バランスのあり方や近年増加する低所得層の居住政策にも有効な示唆を与えるものと思われます。
 本研究は、統計データやGISの利用推進に大きく寄与し、更なる発展が期待されます。

岐阜県白川町

『白川町独自GISの開発と活用による地域の活性化』

 岐阜県加茂郡白川町は、人口約9,000人の中山間地域ですが、役場職員の工夫で独自のGISを開発し、地番図と地形図を統合した基盤データベースを作成しました。運用は15年を超え、必要に応じて集計や統計処理をして、過疎化対策、森林管理などに波及的に活用しています。地図データベースの導入・運用・利用については、担当職員が、役場全体の支持を得つつ、項目から記述形式まで把握して行っています。応用処理も職員の工夫で進められており、他の自治体にも参考になる模範的な統計GISの運用事例と言えます。
 経費を抑えたこのようなGISと統計処理による地図データベースの付加価値化の活動が、他の自治体へも普及することが期待されます。

2014(平成26)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(五十音順・敬称略)

秋山祐樹 (東京大学地球観測データ統融合連携研究機構 助教)

『マイクロジオデータの開発・活用研究の推進とマイクロジオデータ研究会による新たな統計・GISの普及活動』

 秋山氏は、電話帳データと住宅地図データ等を使って、建物1棟1棟、あるいは1人1人の詳細さでデータを全国規模で推計する等のモニタリング手法を開発し、この種のデータをMGD「マイクロジオデータ」と総称することを提案し、その整備と利用を積極的に推進されています。
 一例を挙げると、デジタル電話帳の店舗・事業所をその住所と名称で住宅地図上に正確にマッピングする手法を開発し、さらに年度の異なる電話帳を使って、事業所や店舗、さらにそれらの集合体である商業地域の立地分布の現状と変遷を詳細かつ定量的に観察する手法であり、このMGDは、都市工学、建築学、防災工学、地理学等で極めて高い需要があります。さらに、これを発展させて、わが国で初めて日本全国の商店街・商業地域の分布、形状、広がり、変遷を把握できるデータを実現させ、「商業集積統計」を開発されています。
 もう一つの例は、メッシュ統計や市町村別統計を建物データに確率的に最適配分し、全国約6千万棟の建物の耐火性、構造、築年代、居住者情報の推定を行い、その信頼性を実地調査で確かめられています。言うまでもなく、これは、わが国の災害リスク・地域災害対応力評価のためのミクロ空間情報です。
 さらに、秋山氏は、携帯電話のGPS測位情報に基づいたビッグデータを使って、時系列ジオデモグラフィックス研究にも取り組み、これを上述のデジタル電話帳の活用による商業集積統計と組み合わせて、地域ごとの曜日・時間帯別来訪者分析等を進められています。
 秋山氏はこれらの活動を「マイクロジオデータ研究会」を主宰して推進するとともに、他大学、研究機関、民間企業との共同研究を進め、統計GISの新しい利用環境の整備・拡大にも尽力されています。

塩出徳成 (ウォーリック大学都市科学研究所 准教授)
塩出志乃 (ロンドン大学バークベックカレッジ地理環境開発学部 専任講師)

『道路ネットワーク空間の空間統計分析手法の発展および海外における統計GISの教育・普及』

 塩出ご夫妻は、都市空間における多くの事象が道路ネットワークに沿って発生し、直線距離で分析する既存の手法がなじまないことから、道路ネットワークに適した一連の革新的な空間分析手法を開発されています。
 具体的には、近年、ネットワーク空間上及び時空間上で統計的に有意な塊であるクラスターを抽出する手法とそのツールを開発され、特に疫学分野で繁用されている手法のネットワーク版を発表することで、犯罪分析の際のホットスポット分析の精度を大幅に向上されました。さらに、イギリス、アメリカの警察機関と連携して、ネットワーク空間上の犯罪のリアルタイムサーベイランスシステムを開発中で、これをリアルタイムデータとリンクする研究も進めておられます。
 これらのネットワーク空間統計分析のほか、交通事故の時空間リスクモデルの構築、イルカ生息域の推計、考古学GISによる石器時代の生活スタイル再現、歴史GISによる歴史的疫学データ分析、野生動物と狂牛病の関係等、様々なプロジェクトに統計GISを適用されています。
 これら、統計GISの手法の研究と利用に加えて、ご夫妻は海外の様々なGIS拠点において、教育、研究、講演等を通じて統計GISの普及・啓発に尽力されてこられました。このように、日本の大学教育を経た後、海外において生活し研究・普及活動を続ける人材は希少であり、統計GIS領域における諸制度、大学での貢献の在り方、キャリアパス等に関し、我が国と外国との間の比較、協力、協働等のため、ご夫妻の今後の活動に期待するところが非常に大きいと判断しました。

2011(平成23)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(敬称略)

岩間信之 (茨城キリスト教大学文学部 准教授)
田中耕市 (徳島大学総合科学部 准教授)
浅川達人 (明治学院大学社会学部 教授)
佐々木緑 (広島修道大学人間環境学部 准教授)
駒木伸比古 (愛知大学地域政策学部 助教)
齋藤幸生 (水戸短期大学附属高等学校 教諭)
池田真志 (拓殖大学商学部 助教)

『フードデザートマップの作成によるフードデザート問題の研究』

 本研究グループは、わが国におけるフードデザート問題を先進的に研究しており、海外のフードデザート問題をわが国にいち早く紹介するとともに、統計GIS等を利用してフードデザートマップを作成し、日本においても、フードデザート問題が深刻化していることを実証してきました。特に、地方都市の中心部や大都市圏郊外の住宅団地では、高齢者にとって買い物の困難さが顕著に目立ち、フードデザートとよばれる状態に至っており、買い物の困難さから食事の栄養バランスが偏り、「低栄養」などの健康被害が拡大しているなど、フードデザート問題は深刻化していることを指摘しています。本研究は、統計GISの普及と利用に大きく寄与するものであり、さらなる発展が期待されます。

2010(平成22)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(敬称略)

山本 靖 (新潟県立白根高等学校地歴・公民科教員、新潟大学GISセンター運営委員)

『統計GISの高校教育への普及及び地域振興を目指した活動』

 山本氏は、早くより、国勢調査を始め、商業統計、農林業センサス、SMR(標準化死亡比)、国土数値情報、数値地図等に対して、GISを援用して解析を行い、数多くの研究論文を新潟県高等学校地歴・公民科部会の研究雑誌等に掲載するとともに、高校教育に統計データやGISによる解析を取り入れ、統計データの活用・普及に尽力してこられました。その成果は、教員の研究会のみならず、地域振興や自治体の政策立案にも役立っています。新潟県の高等学校において、最初に統計データを用いてGISや多変量解析を援用し、研究成果を還元したことには、大きな意義があります。

2009(平成21)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(敬称略)

碓井照子 (奈良大学文学部地理学科 教授)

『GIS技術資格制度創設等による人材育成及び統計GISに関わりの深い国土空間データ基盤整備における学術活動』

 碓井教授は、日本の統計GISの人材育成に大きな役割を担っているGIS技術資格制度の提唱者であり、制度創設に大きな貢献をされました。
 また、日本における国土空間データ基盤の検討のため初めて設置された国土交通省GIS整備推進検討委員会で平成8~9年に学術委員として精力的に活動され、統計GISにとっても重要な位置付けになる基本空間データの位置参照情報の整備・体系化に尽力されました。
 さらに、碓井教授が阪神淡路大震災直後に発表した論文「英国におけるGISデータベース整備の現状 ─ 阪神・淡路大震災復興事業にも緊急に必要とされる英国型GISデータベース整備事業─」(ESTRELA、1995年4月号、統計情報研究開発センター)は、政府の基本空間データ整備政策に少なからず影響を与えたと言われています。
 教育面においては、早期より大学のGIS教育に統計GISを取り入れるとともに、近年では海外統計職員への国際研修など、国際的な統計GISの普及にも尽力されています。

2008(平成20)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(五十音順・敬称略)

矢野桂司 (立命館大学文学部 教授)

『4D-GISの先進的研究と“GIS day”を通したGISの普及啓発活動』

 矢野教授は、4次元の時空間を扱う4D-GISの可能性を提起した後、実際に、現代から過去に遡る膨大な地図・統計資料を駆使した京都の都市空間の復原を図り、その主要コンテンツをweb-3D GISの技術でインターネット配信し国際的に高い評価を得ました。教授はこのように先進的なGIS研究の在り方を提起・実践する一方、研究、教育、行政、民間企業、一般市民すべてを対象にしたGIS普及イベント“GIS day in 関西”の開催を主導する等、普及啓発活動にも尽力しました。

由利本荘市

『由利本荘市統合型GISの開発と定着化の実践』

 由利本荘市は秋田県立大学と連携して、平成17年度合併後の市行政に適合した独自のGISを合併後3年掛けて構築し、地域の詳細な地図データと詳細な関連データの管理、地域やゾーンごとのデータ集計等の統計処理等を全部署(職員数1,261人)がこの共通システムで実現しています。時空間データの共有・随時更新を自治体職員の手で達成している事例は少なく、自治体に定着したGISとなっていることは先進的と評価されます。

2007(平成19)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(敬称略)

David Sprague・岩崎亘典 ((独)農業環境技術研究所生態系計測研究領域)

『迅速測図を用いた歴史GISの構築に関する研究と、それを活用した120年間にわたる土地利用変化の解析』

 両氏は、明治初期(1880年代)の陸軍迅速地図により、茨城県南部の地形と土地利用が精度良く把握できることに着目して、これをGISに取り込み、歴史GISの構築を行いました。さらに、1900年代、1950年代、1980年代、2000年の時期について、図法や縮尺の異なる地形図や植生図をGISに取り込んで、共通の座標系で重ね合わせ、120年間にわたる土地利用の変化を統計的に解析しました。この研究は、GIS利用の可能性を拡大するものであり、GISの利用・普及に寄与しました。

2006(平成18)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者
(五十音順・敬称略)

佐藤英人 (東京大学空間情報科学研究センター 助手)

『小地域単位集計を用いた大都市圏の空間分析に関する研究と、それを含む各種統計GISデータの全国利用運営』

 佐藤氏は、大都市圏の「国勢調査 町丁・字等別集計」や「事業所・企業統計調査町丁・大字別集計」の詳細な分析とともに、フィールドワークから得られたデータを融合させて、定性的・定量的な視点から研究を行い、空室となったオフィスビルの住居への転用可能性など今後の都市政策に重要な視座を与えました。また、その研究過程で、統計GISデータの整備・提供が多くの研究者に重要であると認識し、勤務する東京大学空間情報科学研究センターにおいて、率先してデータ管理や「データ共有サービス」の運営に献身的に従事し、統計GISの整備・普及に寄与しました。

林 秀美・前原賢司・津留義信・角石幸信 (1982~92年当時 株式会社ゼンリン研究開発部所属)
故 大迫 忍 (前 株式会社ゼンリン代表取締役社長)

『住宅地図データベースの構築方法の研究開発と統計GISの基盤となる住宅地図データベースの普及』

 林氏を中心とした4名は、他機関に先駆けて1982年から地図データベースの構築方法の研究開発に取り組み、住宅地図のデジタルデータベース化を行い、さらに、全国の住宅地図データベースを維持管理するための調査ネットワークを構築し、1992年頃には地図データベースを安定供給できる体制を確立しました。これによって、わが国における各種GISの普及に直接的・間接的に多大な貢献をしました。4名の活動は、カーナビ用データベースの構築に進み、この分野で日本が世界に先行するきっかけを作ったことも評価されます。

 なお、故大迫氏は当時、総指揮者として社運をかけて地図データベース化の決断を行い、4名の活動を物心両面で支援し、わが国のGIS発展の礎を築きました。

横須賀市

『横須賀市GISの整備及び活用の推進』

 横須賀市では、市民サービスの向上及び行政の効率化・高度化を図るため、平成13年度から市民向け地図情報配信サービスの運用を行い、また、平成18年度には職員向けシステムの更新を行うなど、GISの基盤整備及び活用を推進してきました。市民向け地図情報配信サービス「よこすかわが街ガイド」では、医師会、商工会議所等の関係団体と共同で情報発信するとともに、職員向けシステムでは、台帳や地図情報の一元管理と庁内共有を通じて、情報収集業務の効率化や窓口業務の迅速化を図り、また、職員のスキル向上を図る活用講習会を実施するなど、GISの活用促進に向けた取り組みを包括的に実施している点が特徴であり、市全体で統計GISの推進・普及に貢献しました。

2005(平成17)年度「シンフォニカ統計GIS活動奨励賞」受賞者(五十音順・敬称略)

小池司朗 (国立社会保障・人口問題研究所人口構造研究部 主任研究官)

『明治期(1890年頃)と昭和初期(1930年頃)の関東地方におけるメッシュ人口分布の推定』

 小池氏は、旧版地形図を活用して人口分布を推計する手法を開発し、明治期(1890年頃)と昭和初期(1930年頃)における関東地方の人口分布を推計し、1970(昭和45)年以降整備されている地域メッシュ人口統計と比較可能な基準地域メッシュに編成するという地道な活動を行いました。これによって、日本の近代期の都市化を始めとする諸研究に基盤となるデータを提供するとともに、あらゆる時代・地域において人口分布データをGISで利用可能な形で整備できる可能性を示し、統計GISの整備・充実に寄与しました。

高橋重雄教授・ 井上 孝教授・ 三條和博助教授・ 高橋朋一助教授
(青山学院大学経済学部)

『大学経済学部におけるGIS教育』

 4名は2003年に日本の経済系学部で初めてとなるGIS専用教室の設置に携わり、経済学部専門科目として「GIS入門」「地域人口学」「経済地理学演習」などの授業をGIS専用教室を活用して行い効果を挙げました。また、経済学部におけるGIS教育のための教材開発において題材に工夫を凝らし、その成果の一部は単行本『事例で学ぶGISと地域分析』(古今書院、2005)に収められていますが、同書は事例中心の編集方針から幅広い読者に支持されるなど、社会科学系学部における統計GISの教育の発展に寄与しました。

三重県地域振興部

『三重県GISの整備及び利活用の推進』

 三重県では、GISに関する大学等との共同研究を行うとともに、行政事務の効率化を図り、地図情報を付加した情報提供による県民サービスの向上を図るため、平成12年度に策定したマスタープランに基づいて、地図の整備、GISシステムの開発等基盤整備を行ってきました。そのシステムは、県庁内だけでなく県内市町村、県民、企業等においてデータの登録・流通等の情報共有が可能なところに特徴があり、県全体で活発に利活用されており、統計GISの推進・普及に貢献しました。

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